「なぜ、何故なのです! 何故ルルーシュ様がその様なことなさらねばならぬのですか!」
 長い間行方をくらましていた主から呼ばれ、嬉々としてペンドラゴンにはせ参じたジェレミアは、ルルーシュから話を聞くとその表情を愕然とさせた。血の気の引いた青ざめた顔色で、しばし呆けていたあと、ルルーシュに食って掛かる。初めてのことだった、ジェレミアが主にたてつくことなど。命令に逆らうなどと。それほど彼の中ではルルーシュの今後の計画を聞かされた衝撃が大きく、また受け入れられるものではなかったのだ。
 ルルーシュは必死に涙を流しながら叫ぶジェレミアをただ黙って見守る。
「……」
「あんまりではありませんか……どうしてルルーシュ様ばかりがこのような事ばかり、っ全ての責を負うようなことばかり!」
「……自分のした事の全てに責任を持つ。それの何がいけない。それにこの伝説によって世界は平和となる」
「貴方一人を悪者にしてですか! そのような、そのような世界などッ!」
「ジェレミア!」
 初めてルルーシュが声を荒げた。その言葉の先を聞きたくなかったし、言わせてはならないと思った。
 世界の敵は俺一人、お前はこちらに来るな。
 ジェレミアにとってはそう明言されたも同じ事だった。
「……ッオオオオオオオオオ!!!」
 最後まで供することすら、許してくれない主。なんと非道いお方なのだろうか。
 ジェレミアの閉ざされた左目から決して人には流しえない赤黒い涙が流れ落ちる。
「すまない、ジェレミア。……すまない」
「ルルーシュ様! ルルーシュ様……」
 壊れたように主の名を呼び続けるジェレミアにルルーシュは詫びることしか出来なかった。
 それがジェレミアより世界を選んだ薄情な恋人としての、彼なりの優しさだった。
Written by BAN 0928 08

-Powered by HTML DWARF-