年齢逆転祭

「年齢逆転祭りをしましょう!」
 また会長が変な事を始めた、最初は生徒会の皆がそう思った。続く詳細を聞くまでは。
「ここだと私が一番年長で、一番年若いのがロロでしょ? たまには年を逆転して、若い人ほど先輩になるっての、どう?」
 どうもこうも、と会長の突発的な提案に慣れていないロロは思わず向かいに座る兄に縋る目を向けたが、ルルーシュは既に諦めていた。会長がこう言う以上、避けられないことだと。
 しかし残りの二人の反応は違った。リヴァルはブツブツと会長が後輩ってことは名前で呼んでもいいってことだよな! とニマニマし、シャーリーはミレイに向かって挙手し、同学年の場合はどうなるんですか会長! と勢い良く質問した。
「よしシャーリーいい質問ね。同学年のままだとつまらないから、誕生日が後のほうの人ほど先輩ってことで。だからルルが一番先輩ってことになるわね。次にリヴァル、そしてシャーリーが最後だから後輩ね。ちゃーんとルルのことをルルーシュ先輩って呼ぶのよ?」
 その答えを聞いたシャーリーはまるで蛙の潰れたような声を上げた。隣に座るルルーシュが心配げな視線を向けるが、何かに燃えているシャ−リーは珍しくルルーシュを見向きもしなかった。目を瞬いたルルーシュが、こいつはどうだと自分の斜め向かいに座るリヴァルを見て――すぐに逸らした。ああ、見るまでもなかったなと若干の自己嫌悪が入るほど、リヴァルもまた燃えていた、このルルーシュにとっては得体の知れない企画に。しかしこの気分をわかってくれる人が一人でも居ると気分が大分楽になる。正面に座る相変わらず困惑しているロロに慈しんだ視線を送る。困っているところも可愛いと少しだけ意地悪に思ってしまう兄を許してくれ。
 そんな酷い兄の性根を神は見ていたのだろう、更に続いたミレイの言葉でルルーシュは地獄に突き落とされた。
「そうそう。ロロが一番年上になるんだから、ルルはロロのことお兄ちゃんって呼ぶ事、いいわね!」
 その瞬間、ロロの目がキラキラ輝いて見えた。

「えーでは、これより年齢逆転祭始めたいと思います」
 年齢が若くなるということで意識したのか、いつもより若干若い声のミレイがゲームの始まりを告げた。それは即ち火蓋が切って落とされたということ。一体誰が最初に声をあげるのかと皆が皆を伺う。ただしルルーシュは除くが。
「アタシ、ルルーシュ先輩のためにハチミツ漬けのレモン作ってきたんです。良かったらバスケの後に食べてください。あ、もしよかったらアタシも一緒に」
「ちょおおおおっと待ったぁ! ルル先輩には私だって差し入れ持ってきてるんだから! ミ、ミレイは後輩なんだから先輩を立ててもいいと思うわ!」
「そうだそうだ、ルルーシュ先輩にはシャーリーがいるんだから、ミッミミミミミレイの差し入れはこの俺が貰ってやるよぉ!」
「だめだ、兄さ、ルルーシュは僕の弟なんだから僕が一番先に差し入れる権利があるんだよ!」
 なぜあえて体育会系のシチュエーションを選んだんだ会長は。しかもよりにもよってバスケをチョイスするあたり嫌がらせにも程がある! シャーリーまで体育会系特有の縦割り社会を持ち出さなくても、そしてリヴァルはどもりすぎだ、何故ロロまでこんな遊びに……。ルルーシュはその素晴らしい頭脳を突っ込みのために有益に存分に振るう。
「ちょっとルルーシュ先輩、黙ってないで何とかしてくださいよー」
「そうですよルル先輩!」
「いや別にルルーシュ先輩の意見よりはミ、ミミミレミミレイの意見をだな!」
「そんなに一気に僕の弟に話しかけないでくれる? ルルーシュが困っているじゃないか。これだから赤の他人はルルーシュのことをよく分かりもしないで……!」
 ああ、突っ込み役が欲しい。普段は大人しい弟のなりきりは見てて幸せな気分になるが、出来ればもう今日は口を開かずに一日を終えたい。しかし世の中はルルーシュだけには甘くない。
「ルル、明日一人で小学生の日、やりたい?」
「全くミレイったらお茶目だなハハハ」
 音も立てずにルルーシュに近づいたミレイは底冷えするような声でルルーシュの耳元でささやいた。瞬時に今の状態と一人小学生の日を秤にかけ、明らかに恥をかく量が少ない今をルルーシュは懸命に生きる事にした。
「あーずるい、私もルル先輩とお喋りしたいのにー」
「俺だってミレミミミミレイレイレイミレイと話したいー」
「ルルーシュは僕のだよ! ミレイもシャーリー僕より年下なんだから少しは年上を立ててくれないかな」
「シャーリーとリヴァルは少し落ち着きなさい。お……ッ兄さんも。だいたいこれはゲームなんだから、そんなに真剣にならなくてもいいじゃないか」
 呆れたルルーシュの正論には四方からの批難が待っていた。
 もういい加減にしてくれ……。
Written by BAN 0818 08

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